教育委員会のいう「学校の適正規模」とは、国が補助金を出す際の基準
(2015年1月26日更新)
教育委員会が学校統合・学校再編を進めようとするとき、決まって持ち出すのが「学校の適正規模」についての国の基準です。
「公立小中学校の適正規模は、国の基準では12〜18学級」だということを、おそらくほとんどの教育委員会が「錦の御旗」のように使っていると思います。
しかし、これは何重にも住民をだますものです。
住民の側が知りたい「学校の適正規模」というのは、教育的な観点からの「適正規模」のはずです。子どもたちの学習や成長にとって、ふさわしいとされる学校の規模がどれくらいかというものです。
ところが「教育的観点から適正な学校規模」を国は定めていません。
2015年1月に文部科学省が公表した「手引」でも、「小・中学校では一定の集団規模が確保されていることが望ましい」、教育的な観点から学校規模の適正化を考える上で「一定の学校規模を確保することが重要」としているだけです。
ここで「一定の規模」というのが、国の定める学校規模の標準(12〜18学級)を指していることは容易に想像できます。
しかし「標準規模」を「適正規模」と明記できない点に注目することが大切です。
つまり「学校の適正規模」というのは、地域の実情によって異なり、全国一律に決められるものではないというのが、現在の到達点だからです。
また、それは行政が一方的に決めるものでもなく、教育条件の改善の観点を中心に据えることはもちろん、「地域とともにある学校づくり」の視点をふまえ、保護者や地域住民との丁寧な議論を積み重ねて決める必要があるからです。
こうした点は、学校統廃合を加速させるために作られた「手引」でも無視することはできず明記されています。
- 文部科学省は、過去に中央教育審議会で「教育的観点から望ましい学校規模」について検討を始めたことがあるのですが、審議は中断し、結論は得られていません。
- 「学校規模の標準」とされている「12〜18学級」は、教育学的・科学的に検討されたものでなく、「経験的に望ましい」と考えられる程度の基準でしかありません。
- WHO(世界保健機関)は生徒100人以下という基準を示していますが、日本では、そういったことは全く考慮されていません。学校統廃合を進めることしか頭にありませんから、こういう観点は不要ということなのでしょう。
行政当局が「適正規模」として「12〜18学級」にこだわるのは、それが国の補助金の基準になっているからです。
実は、「学校の適正規模」について定めた法律が1つだけあります。公立小中学校の施設整備に対する国の補助金(負担金)について定めた法律です。
国が補助金を出すには基準が必要です。その基準が「適正規模」といわれるものです。国が定める「適正な規模」に学校を統合するなら、校舎や体育館など施設整備に補助金を出しましょう、というものです。
ここで国が定める「適正な学校規模」というのが
- 学級数が、おおむね12〜18学級
- 通学距離が、小学校4q以内、中学校6q以内
です。
「おや?」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。そうです。学校統合基準そのものです。
つまり、国が定めた統合基準にそって学校を統合するなら、施設整備の補助金を出すという仕組みになっているのです。
ですから、教育委員会が「学校の適正規模について国の基準が12〜18学級」と言うのは、単に「補助金めあて」で言っているに過ぎないのです。
なお、この基準について国は、弾力的な運用を行っています。ただし、そのことが逆に広い地域にわたる学校統合も可能としているので注意が必要です。