学校統廃合の真のねらい

学校統廃合の本当の目的・ねらいは学校経費の効率化・教育予算の削減

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学校統廃合の真のねらい

(2013年2月9日)

「小規模校は、経費が割高になって非効率だから、統廃合して学校経費を合理化する」ことが、学校統廃合の本当のねらいです。

 

このことは、財務省の「予算執行調査」を見るとよくわかります。「予算執行調査」というのは、財務省主計局や全国の財務局の担当者が、予算が効率的かつ効果的に執行されているかといった観点から行う調査で、2002年度から毎年実施されています。何を調査するかは、例年4月に選定されます。

 

2007年度に「学校規模の最適化に関する調査」が選定され、7月に調査結果をまとめました。2007年6月の財政制度等審査会の建議は、この予算執行調査の中間集計を用いています。

 

財務省の予算執行調査 「学校規模の最適化に関する調査」(2007年7月)
 (財務省のホームページへ)

 

学校経費の効率化めざす財務省

財務省の「学校規模の最適化に関する調査」は、学校を統合して2005年4月に開校した全国の公立小中学校すべてを対象に、「学校統合の現状及び効果等の把握」を行ったものです。

 

調査結果のまとめでは、「学校統合については、教育政策や住民自治等が関係する面が強く、財政効率化という観点のみで論ずるべきではない課題」ということが、まず述べられます。

 

しかし、その一方で、学校統合によって「人件費を中心として、小中合計で約170億円の効率化、児童生徒一人当たりでは約3割の効率化」が図られたと強調しています。

 

そして「今回の調査で、学校統合については、@財政効率化のみならず、A学校規模の適正化・教職員配置等の教育政策上の効果、B保護者・子ども・設置者等の関係当事者の評価も肯定的であったことが、実際のデータで明らかになった」とされています。

 

教育効果は検証せず財政効率性のみ優先

ここで言っている「教育政策上の効果」とは、学校規模を標準規模にできたかどうか、教職員を削減できたかどうか、といったことであって、教育効果とは全く違います。

 

また、「関係者の評価も肯定的」としていますが、保護者や児童・生徒が、「統合してよかった点」としているのは、圧倒的に多いのが「友達がたくさんできる」(55%)です。統合すれば児童・生徒の数が増えるのですから、表面的には当たり前のことです。

 

一方、問題は「統合して困った点」です。「通学距離が遠くなった」(22%)、「友達の家が遠い」(14%)、「少人数の方が指導が細かい」(14%)といったように、子どもたちの学習や生活面で、具体的・深刻な問題が生じています。しかし、そういった点は無視して、学校統合は「おおむね歓迎されている」と結論付けています。

 

「財政効率化という観点のみで論ずるべきではない」としながら、教育効果や子どもたちの生活面への影響などは、何ら検証されていません。

 

財政効率性のみから学校統合が促進されては、一番被害を受けるのは子どもたちです。

 

財務省のめざす学校統廃合の進め方

「予算執行調査」の結果にもとづき、財務省は学校統廃合についての今後の検討の方向性として、次のことを点をあげています

 

  • 少子化が進展する中、全国あまねく教育の質を向上させつつ、コスト縮減を図り、効率化を進めるためにも、学校規模の最適化を目指す必要がある。
  • 地方自治体が学校の統合を積極的に進められるよう条件整備する必要があり、各地方公共団体・各省庁横断的な取組みを検討すべき。

 

効率化のため「学校規模の最適化」をめざし、教育委員会や文部科学省まかせでなく、地方自治体や国をあげて学校統廃合を促進させる方向を打ち出しました。

 

具体的な検討課題

具体的な検討課題としては、次のような点を示しています。

 

都道府県が学校統合に積極的に関与

都道府県は教職員の人件費を負担しているのだから、「統合による財政効率化のメリットの最大の享受者」は都道府県だとして、都道府県が積極的に学校統廃合に関与することを提起しました。

 

地方自治体あげての取り組みというのは、公立小中学校の設置者である市町村あげてということにとどまらず、都道府県も含めた地方公共団体一体となって学校統廃合を進めるということなのです。

 

そして、「各都道府県の特色に応じた、設置基準、統合基準」を定め、「統合当初の一時的対応のための教職員の加配や、施設の維持・改修コストの補助、通学支援(スクールバス等)」など、市町村に対し「アメ」を用意するよう求めています。

 

都道府県がそうした取り組みをやりやすいように、国は「統合の取組みに対し、教員配置や施設整備(優先採択、有効活用支援など)、通学面(スクールバス等)における支援」をするほか、交付税措置においても、特別の配慮をするよう求めています。

 

交付税措置における配慮というのは、現行の交付税算定基準には学校数が含まれるので、統合を行い学校数が減少すると、交付税額が減少してしまいます。そうならないよう配慮するようにということです。

 

国は「学校の再編・統合に関する基本的な方針」を示す

そのほか国に対しては、「学校の標準規模・配置、学校の再編・統合に関する基本的な方針」を示すよう求めています。

 

さらに、「小学校より、まずは中学校において統合を進める」といったことまであげています。いま、学校再編計画が持ち上がっているところでは、まず中学校の統合を先行して、中学校の跡地に、いくつかの小学校を統合してもってくる計画があると思いますが、その背景には、財務省のこうした方針があるのです。

 

いま以上の教育予算削減は許されない

学校統廃合のねらいは、学校経費の効率化です。しかし、いまでも日本の教育機関に対する公財政支出(公財政教育支出)の対GDP割合は、OECD加盟国の中で最低です。3年連続の最下位です。

 

OECDの「図表でみる教育 2013」によれば、OECD加盟国平均が5.4%に対し、日本は3.6%です。これ以上、教育予算を削るなど、とんでもありません。

 

自民党は教育予算増額の公約を反故にするのか !?

自民党は、2012年衆院選の選挙公約で「OECD諸国並みの公財政教育支出を目指します」(「J-ファイル2012 自民党総合政策集」)と掲げました。

 

OECD加盟国平均5.4%に対して日本は3.6%です。その差1.8%をなくすには、2010年のGDPが479兆円ですから、8.6兆円の教育予算増額を公約したのです。

 

2010年の国と地方あわせた文教費総額(教育費総額)は22.8兆円なので、教育予算を今より38%増額、つまり1.4倍にして、やっとOECD加盟国の平均レベルになるのです。

 

文教費総額とGDPの関係についてはこちら
 (文部科学省の統計データにリンク)

 

自民党・安倍政権は、この公約を反故にするつもりなのでしょうか?

日本政府は2012年9月、国際人権A規約(社会権規約)13条2(b)(c)項、「中等教育および高等教育の漸進的無償化」条項の留保撤回を決定し、同年9月11日に、国連に通告書を送付しました。

 

日本政府は、規約13条2(b)(c)項に拘束され、教育予算の大幅な増額が求められます。