教育的観点から望ましい学校規模を国は示していない
(2014年2月13日)
「教育的観点から望ましい学校規模」について、中央教育審議会の中で検討されたことがあるのですが、結論は得られず中断しました。
つまり国は、今日に至るも「教育的観点から望ましい学校規模」について「基準」を示していないのです。
現在「適正規模」とされている基準は、教育学的観点から定められたものではありません。詳しくは「適正規模の根拠」をご覧ください。
中教審が検討を要請された背景
中央教育審議会で「教育的観点から望ましい学校規模」が検討されるようになった経緯をご紹介しておきましょう。
2007年6月6日、財政制度等審議会が建議で「小規模校は非効率」として「学校規模の最適化」を求めました。
同年12月25日、教育再生会議が第3次報告で「国として、教育効果等の観点から、望ましい学校規模を示す」よう求めました。
翌2008年6月27日に閣議決定された「経済財政改革の基本方針2008」(骨太の方針2008)において「教育基本法の理念の実現に向け、新たに策定する教育振興基本計画に基づき、我が国の未来を切り拓く教育を推進する。その際…教育的観点からの学校の適正配置、定数の適正化…など、新たな時代に対応した教育上の諸施策に積極的に取り組む」とされました。
その翌月、2008年7月1日に閣議決定された「教育振興計画」(対象期間:2008年度〜2012年度)では、「学校の適正配置は、それぞれの地域が実情に応じて判断することが基本であるが、国は望ましい学校規模等について検討し、学校の適正配置を進め、教育効果を高める」とされました。
これと前後して、2008年6月、中央教育審議会の初等中等教育分科会において「学校規模の在り方や学校の適正配置」の審議が始まります。
初等中等教育分科会に「小・中学校の設置・運営の在り方等に関する作業部会」が設置され、「教育効果等の観点から望ましい学校規模」の検討が開始されたのです。
中教審での検討はどうなった?
この「小・中学校の設置・運営の在り方等に関する作業部会」は、2008年7月2日に第1回が開催され、延べ12回開かれましたが、2009年3月27日の第12回の作業部会を最後に、審議は中断しました。
ですから「教育的観点から望ましい学校規模」について、中教審の結論は得られていません。
2009年7月6日の初等中等教育分科会に「小中学校の適正配置に関する主な意見等の整理」として、それまでに作業部会で出された意見を文科省が取りまとめ、報告されただけです。
その後、2013年6月14日に閣議決定された「第2期教育振興基本計画」(対象期間:2013年度〜2017年度)では、「第1期計画」のような「望ましい学校規模」や「学校の適正配置」といった言葉は消えました。
替わって「全国的な基準の設定(学校等の設置基準、学習指導要領、学級編制と教職員定数の標準など)」を「国の役割」とし、その「役割を確実に果たすための措置を講じる」とし、安倍政権らしい強権的な姿勢がにじみ出たものとなっています。
このように、国は「教育的観点から望ましい学校規模」の検討を始めたのですが、1年足らずで中断し、いまも結論は得られていないのです。
学校統廃合をめぐる攻防はこれからが正念場
「教育的観点から望ましい学校規模」基準を定めたい国のねらいが、国民の願いとは別のところにあったことは明らかです。国の思惑は小規模校を統廃合することですから。
しかし、こうした国の動きは、ウラを返せば、現代において、現行の「基準」が教育的観点から望ましい学校規模でないことを国自身が認めているということでではないでしょうか。
ただし、安倍政権の危険性は十分見ておく必要があります。そもそも、いまの学校統廃合の動きが加速されてきたのは第1次安倍政権の時代です。
第2次安倍政権になって、その危険性は増しています。安倍首相は、「教育再生」を「経済再生と並ぶ日本国の最重要課題」と位置づけ、改悪した「教育基本法の理念を具現化」するとして、教育への政治介入を強めています。
内閣法制局長官をすげ替えて、解釈改憲によって集団的自衛権の行使へ道を開こうというのが安倍内閣です。立憲主義の大原則さえ平気で蹂躙する内閣ですから、中央教育審議会に、自分の意図する結果を出させることなど何とも思わないでしょう。
現に、教育委員会制度の見直しで、中教審は、教育委員会を形骸化し首長の権限を強化する答申を出しました。ただ、教育委員会の権限を残す案も併記するという異例なものでした。
現在、自民党の議員立法という形で国の積極関与で学校統廃合を促進させる内容を含む法案も準備されています。
今後、地方の教育行政をめぐる住民との矛盾はますます激しくなるでしょう。学校統廃合をめぐる攻防は、これから正念場になりそうです。