「適正規模」以上の学校が増えた
(2014年2月15日)
文部省(当時)は、学校の「標準規模」「適正規模」を「12〜18学級」と定めて、1956年(昭和31年)に学校統合を奨励する通達をだし、補助金を手厚く出す制度も設け、小規模校の統合を進めてきました。
しかし、無理な学校統合が各地で進められ、矛盾が噴出し、1973年(昭和48年)には学校統合政策を方向転換する通達を出します。
その間、学校規模は「適正化」されたのでしょうか。文部科学省の資料をもとに見てみましょう。
戦後、第一次ベビーブームによる小学校児童数のピークが1958年度(昭和33年度)、中学校生徒数のピークが1962年度(昭和37年度)でした。その時期と、学校統合政策を方向転換した1973年度(昭和48年度)の学校規模の変化を見てみます。
小学校の学校規模(学級数)別 学校数の変化
5学級以下 | 6〜11学級 | 12〜18学級 | 19〜24学級 | 25〜30学級 | 31学級以上 | |
---|---|---|---|---|---|---|
1958年度 | 7,430 |
8,431 |
6,081 |
1,900 |
1,350 |
1,539 |
1973年度 | 5,371 |
8,750 |
4,464 |
2,455 |
1,801 |
1,517 |
増加率 |
▲28% |
4% |
▲27% |
29% |
33% |
▲1% |
「適正規模」とされた「12〜18学級」の学校が大きく減り、「適正規模」以上の学校、つまり「19〜24学級」「25〜30学級」の学校が大幅に増加しました。
「適正規模」にするというのは名目に過ぎず、実際には過大校を多く生み出しています。
中学校の学校規模(学級数)別 学校数の変化
5学級以下 | 6〜11学級 | 12〜18学級 | 19〜24学級 | 25〜30学級 | 31学級以上 | |
---|---|---|---|---|---|---|
1962年度 | 2,795 |
3,974 |
2,259 |
1,134 |
858 |
931 |
1973年度 | 2,481 |
3,068 |
2,406 |
1,260 |
614 |
366 |
増加率 |
▲11% |
▲23% |
7% |
11% |
▲28% |
▲61% |
数字上は小学校ほどひどくはありませんが、「適正規模」以上の「19〜24学級」が、もっとも増えています。
学校統合は教育効果の向上より統廃合そのものが目的だった
文部省(当時)は、1956年通達で「小規模学校においては…教育効果の向上を図ることが困難」(※)として、12〜18学級を「適正な規模」と定め、学校統合を奨励しましたが、結果的に「適正規模」以上の学校を多く作り出しています。
(※) 1973年通達では、小規模校の教育上の利点を認め、存続・充実を選択肢とすべきことを盛り込んでいます。
つまり学校統合は「教育効果の向上を図る」ことでなく、学校経費節減のために統廃合することが目的であったことが、この結果からも明らかです。
同時に、「12〜18学級」を「適正規模」と定めた明確な根拠がないことも明らかでしょう。教育的観点から本当に望ましい基準であるなら、「適正規模」の学校を減らすことなどあってはならないことですから。
「標準規模」「適正規模」は、そもそも教育学的・科学的根拠にもとづくものでなく、「経験的に望ましい」として定められただけのものです(⇒ 詳しくはこちら)。