自民党が議員立法で制定ねらう
(2014年1月10日)
自民党の教育再生実行本部(本部長=遠藤利明衆院議員)が9日、「教育再生推進法案(仮称)」を、今月開会の通常国会に提出する考えを記者会見で明らかにしました。「改正教育基本法の理念を具現化するための後押しが必要だ」として法制定をねらっています。
「教育再生推進法案(仮称)」の内容
新聞報道などによると、法案には、「適正な学校統廃合の推進」、「教育基本法の趣旨に基づく学習指導要領や教科書の作成」といったようなものが盛り込まれるようです。
国の積極関与による学校統廃合の推進
「学校統廃合の推進」を法案に盛り込む背景・ねらいは、素案について報道した次の記事がよく分かります。
「学校の統廃合は、自治体が判断するため、存続を望む地域の要望が優先されがちだとの指摘があった。素案では、『国及び地方自治体は、学校の統合や廃止を含め、必要な施策を講ずる』 と明記し、国が積極的に関与するよう定めている」(読売2014年1月4日)
このように、地方自治体が計画を作りながら思うように進んでいない学校統廃合を、国が積極的に関与して促進させようとするのが、「教育再生推進法案」の大きな柱の1つです。そのねらいは、学校経費の効率化にほかなりません。
第1次安倍内閣のときに、財政制度等審議会の建議(2007年6月6日)で「小規模校は非効率」「学校統合の推進」を打ち出し、第2次安倍内閣になって、同じように財政審(2013年11月29日)で、「少人数学級には政策効果がない」「教職員増員という量的拡大には投資に見合う効果はない」として、「小規模校の統合推進」「義務教育予算の量的拡大(教職員数増)を抑制」の方向を打ち出しました。
その方向を「教育再生」と称して、推進体制を整備しようというのが、「教育再生推進法」の制定でしょう。
現在の学校統廃合に関する国の指針は、以前の学校統合を奨励してきた立場を反省して、@無理な学校統廃合の禁止、A地域住民の合意、B小規模校の尊重、C学校の地域的意義の考慮――を柱とするものとなっています。これは、全国各地の地域住民のたたかいが国を動かし、勝ち取ったものです。
「教育再生推進法案」は、住民が勝ち取った成果を踏みにじるものです。地域住民の反対の声を国家権力の力で押さえつけようとする安倍政権の危険な姿を示すものではないでしょうか。
教育への国家統制の強化
もう1つの大きな問題が、国家権力による教育への介入です。「改正教育基本法の理念の具現化」といいますが、2006年12月、第1次安倍政権のときに教育基本法を改悪したのは、子どもたちに「愛国心」を強制するためと、国家権力による教育への介入に道を開くためでした。
そして、第2次安倍内閣の誕生後、教科書検定で国の審議会が「愛国心教育に反する」と判断すれば不合格となるような検定基準の改悪、道徳の時間を「教科」化し、検定教科書を使って国が定める徳目を教え込む時間にする計画、学習指導要領などの教育内容を全面的に改変、こうした危険な動きが進行中です。それを「後押し」するのが「教育再生推進法案」です。
道徳を教科にするということは、点数を付けてランク付けし、評価するということです。子どもたちの「愛国心」をランク付けして評価するものです。まさに教育の国家統制です。
さらに、戦後続いた教育委員会制度を形骸化し、教育を首長直轄にして露骨な政治介入を可能とする動きもあります。
これでは戦前への逆戻りです。靖国神社参拝、集団的自衛権を憲法解釈の変更によって可能とさせる動き、領土問題など外交政策、どれをとっても安倍政権は、世界の中で孤立化を強めています。安倍流「教育改革」は、現代世界で通用しない日本人をつくりだしてしまう非常に危険なものです。