小規模校は非効率とした財政制度等審議会

「小規模校は財政上非効率」として<br/>財政審が学校統廃合の推進求める

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学校統合の推進を求めた財政審建議

(2013年2月10日)

財務相の諮問機関である財政制度等審議会は、2007年6月6日、「平成20年度予算編成の基本的考え方について」という「建議」を出し、「小規模校は財政上も非効率」として「学校規模の最適化」「義務教育費のコスト縮減」を打ち出しました。

 

実はこの年の4月、財務省の予算執行調査において、「学校規模の最適化に関する調査」が選定され、その調査結果が7月に公表されました。

 

財務省の「学校規模の最適化に関する調査」について詳しくはこちら

 

6月に取りまとめられた「建議」では、その中間集計まで用いられ、「小規模校の統合効果」を強調し、学校統合の推進を強く求めるものとなりました。詳しく見てみましょう。

 

教育予算は「量的には既に十分」!?

「建議」は、「教育予算を増やせということではなく、既に量的には十分な投資を行っている現行制度の下で、効率化とメリハリ付けを徹底しつつ、教育の質を高めていく取組みを行うことが先決」としています。

 

そもそも、前提となる認識そのものが間違っているのではないでしょうか。「教育予算は量的にはすでに十分」などということに国民が納得できるでしょうか。

 

日本の教育機関に対する公的支出のGDP比は、OECD加盟国のうち最低です。自民党でさえ、公財政教育支出をOECD諸国並みにすると政権公約に掲げざるを得ない状況なのです。

 

教職員給与の効率化と学校統合の推進

「建議」のいう「効率化とメリハリ付け」の具体的内容は、教職員給与の効率化と学校統合の推進です。これにより、「現在、生徒一人当たり年間約90万円の公費がかかっている義務教育費のコストを縮減していくことが重要」としています。

 

ターゲットは教職員人件費の削減

義務教育費用の中でもっとも多いのが教職員人件費です。「建議」では、教職員給与が「義務教育にかかる総費用の約8割を占める」ので、その効率化が重要としています。財務省や財政審の委員らは、少子化によって小中学校の児童生徒数が大きく減少しているのに、それに見合ったように教職員の数が減らないのが気に入らないのですね。効率が悪いと考えるわけです。

 

そのため「建議」では、教職員の定数は「児童・生徒の減少に見合う数を上回る純減を実現する」ことを求めています。その手法が「行革」と「学校統合」です。

 

さらに、「教員評価を踏まえたメリハリのある給与体系」や「地方公務員一般職を上回る優遇部分の確実な縮減」を求めています。

 

しかし、「優遇部分」とされる「教職調整額」は、決して教職員が優遇されているわけではありません。教職員の「職務と勤務の特殊性」から、一般行政職と異なり、労基法37条にもとづく超過勤務手当制度を適用しない代わりに設けられているものです。つまり、残業時間のカウントが困難なので、残業代を出さない代わりに支給される手当です。

 

教職員の長時間過密労働は非常に深刻です。「建議」は、「超過勤務が嵩んでいる」ことは認めるものの、教職員を増やしたり教職調整額を増額するのでなく、「業務の繁閑に応じた変形労働時間制の採用、パートタイマー・アウトソーシングの活用」して「効率的に運用」するよう求めているのです。

 

教職員を減らし、人件費を削減する、教職員を非正規に置き換える、こんな方向で、「建議」でも言っている「質の高い教育を効率的に提供する」ことなどできるはずがありません。

 

OECDの「図表でみる教育 2012」でも、「日本の教員の法定勤務時間は大幅に長い」「2000年以来、ほとんどの国では教員の実質的給与が上昇している一方、日本では低下している」ことが指摘されています。

 

学校規模の最適化

「建議」は、「ここ30年間で子どもの数は約4割減少したにもかかわらず、公立小中学校の学校数は数パーセントしか減っておらず、全国の約半数の学校が11学級以下のいわゆる小規模校となっている。こうした小規模校については、教育政策・効果上の問題があり、財政上も非効率である」としています。

 

そして、小規模校の統合効果について、財務省の予算執行調査により、「保護者の約6割は積極的な評価を行っている一方、消極的な評価は約1割に止まっているほか、教員配置等、教育政策上のメリットが認められること、さらに生徒一人当たりのランニングコストも約3割縮減できたこと等が初めて全国規模で明らかにされた」として、小規模校の「統合・再編の推進」を求めています。

 

保護者のアンケート結果は、内容を丁寧に見る必要があります。詳しくはこちらをご覧ください。

 

さらに、今後の学校統合・再編の進め方については、「国・都道府県・市町村の役割分担を踏まえ、地域に応じた制度設計やインセンティブの付与等についての検討を省庁横断的に進め」ることが必要としています。これは、学校統合・再編を教育委員会や文部科学省任せにせず、地方自治体・国をあげて推進することを提起するものです。その後7月に財務省が公表した「学校規模の最適化に関する調査」結果の「まとめ」と同じ方向です。

 

ただし、財務省の「まとめ」では、一番最初に、「学校統合については、教育政策や住民自治等が関係する面が強く、財政効率化という観点のみで論ずるべきではない課題」と明記しています。財政効率を最優先に考える財務省でさえ、無視するわけにはいかないことなのです。この点は見逃してはならないことでしょう。

 

しかし、財政審の「建議」では、このことは全く触れられていません。教育的観点や住民自治といった、これまでの歴史の中で築き上げられてきた大切なものを無視し、行政効率性が最優先に考えられています。財務省では踏み出せない部分を、民間委員で構成する「財政制度等審議会」の名で一歩踏み出し、今後、強力に学校統廃合を推進させようとするのが、この「建議」のねらいではないでしょうか。