教育再生会議第三次報告

「教育再生会議」第3次報告で<br/>露骨な学校統廃合の推進を打ち出す

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安倍流「教育再生」のもとでの国による学校統廃合強化の動き

(2013年2月9日)

教育再生会議は、安倍首相(第1次安倍内閣時)の肝いりで2006年10月に発足しました。委員には教育研究者を含めず、会合は非公開という異常なものでした。その2ヵ月後の12月には、教育基本法の改悪を強行しました。子どもたちに「愛国心」を強要し、教育への政治介入を強めるためです。

 

安倍首相が2007年9月に政権を投げ出した後、教育再生会議は、2007年12月25日に第3次報告、2008年1月31日に最終報告を出し、「役割」を終えました。この教育再生会議の第3次報告で、学校統廃合の推進が打ち出されたのです。

 

2012年末に再び首相に就いた安倍氏は、「教育再生は、経済再生と並ぶ日本国の最重要課題」「改正教育基本法の理念が実現したといえる状況にない」(教育再生実行会議(第1回、2013年1月24日)での安倍首相の冒頭挨拶)と、「教育再生実行会議」を設置し、「教育再生」に執念を燃やしています。

 

学校統廃合の推進を打ち出した「教育再生会議」第3次報告

2007年6月1日の「教育再生会議 第2次報告」で、「学校の適正配置など、効率的な予算配分の在り方」が「第3次報告へ向けての検討課題」とされました。

 

ちょうど財務省が「学校規模の最適化に関する調査」をまとめ、財政審が「小規模校は財政上非効率」として「学校統合・再編の推進」を求める建議を取りまとめていた時期です。

 

そして、2007年12月25日の教育再生会議の第3次報告で、学校統廃合を進める具体的方策が示されました。

 

さらに、教育再生会議の最終報告(2008年1月31日)では、「第1次報告から第3次報告までの提言は、実行されてこそ意味がある」として、「フォローアップのためのチェックリスト」を作成し、そのリストに「学校の適正配置の推進」をあげました。

 

第三次報告で示された学校統廃合推進の内容

教育再生会議の第3次報告では「報告の重点」を、

  • 教育現場の自立的な切磋琢磨を促し、頑張った学校、教員を応援する
  • 国は教育格差を生まないよう最低基準をしっかりと示し、…現場の自主的な取組を積極的に支援する役割を果たす

としました。国が示した基準にそった取り組みをするところに対しては、積極的に支援するというものです。あからさまな財政誘導によって、地方自治体や教育現場に競争をあおるものです。

 

学校統廃合に関する部分は次のように記しています。

教育効果を高めるため、国は、望ましい学校規模を示す
  • 学校の適正配置については、それぞれの地域が実情に応じて判断することが基本であるが、国として、教育効果等の観点から、望ましい学校規模を示す。
国は、統廃合を推進する市町村を支援する
  • 学校を統廃合した場合における通学の安全確保のためのスクールバス等整備への支援
  • 廃校となった校舎の自然体験活動施設等としての活用への支援
  • 学校を統廃合した場合の教員定数の激変緩和、施設整備面等での支援

 

つまり、国が「望ましい学校規模」を示し、それを目標に学校統廃合を行う市町村には、手厚い財政支援を行うというものです。

 

学校統合を奨励した1950年代・60年代と同じやり方です。当時、無理な学校統合が各地で進められ、その反省から1973年に方針転換した教訓を全く活かしていません。時代を逆行させるものです。

 

ここで注目してほしいのが、「教育効果等の観点から望ましい学校規模」を国として示す、としている点です。「教育効果等の観点から望ましい」というのがポイントです。つまり、「教育効果等の観点から望ましい学校規模」を国が示していないことを認めているのです。

 

現在、学校の「標準規模」「適正規模」として法令で定められている「12〜18学級」という学校規模は、もともと教育的観点から導き出されたものではなく、小規模校を統合するときに国が補助金を出すうえで、「標準規模」「適正規模」として定められたものです。詳しくはこちら

 

2008年7月1日に閣議決定された「教育振興計画」には、「学校の適正配置は、それぞれの地域が実情に応じて判断することが基本であるが、国は望ましい学校規模等について検討し、学校の適正配置を進め、教育効果を高める」と、この第3次報告の内容がそのまま盛り込まれました。

 

そして翌7月2日、中央教育審議会の作業部会で「教育効果等の観点から望ましい学校規模」についての検討が始まります。しかし、いまに至るも結論は出ていないのです。詳しくはこちらをご覧ください。

 

とはいえ、第3次報告の「教育効果等の観点から望ましい学校規模」が、国民の期待とかけ離れていることは明らかです。国が「望ましい学校規模」の基準を示し、それを目標に学校統廃合を進める市町村を財政的に応援することで、学校統廃合を促進させる体制づくりを求めたのが、教育再生会議の第3次報告です。