学校統廃合横行の背景

無理な学校統合禁止が国の方針なのに学校再編計画が進むのはなぜ?

MENU

学校統廃合・学校再編計画が各地で持ち上がる背景

(2013年2月10日)

学校統合についての国の指針は、文部省(当時)が1973年に出した無理な学校統合の禁止や住民合意、小規模校の尊重などを旨とする通達であるにもかかわらず、現実には、各地で行政や教育委員会による一方的な学校統廃合計画が持ち上がっています。

 

その背景には、少子化を理由とした学校経費の合理化・教育予算の削減の動きがあります。なかでも注目すべきは、次の2つです。

 

 

これが引き金となり、今日の学校統廃合の動きが強められてきました。もちろん、こうした国の動きと軌を一にした、それぞれの自治体の首長の政治姿勢の問題があることは言うまでもありません。

 

1973年の「Uターン通達」は、無理な学校統廃合に反対する地域住民のたたかいによって勝ち取ったものです。その大切な成果が、いま踏みにじられようとしています。

 

少子化を理由とした学校統廃合の加速

少子化の問題は確かに深刻です。緊急に抜本的な対策が求められる課題です。

 

2010年の国勢調査で、年少(0〜14歳)人口は1,684万人でした。国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計(2012年1月)によれば、2046年には1,000万人を割り、50年後の2060年には791万人の規模になると推計されています。

 

これは出生中位推計です。出生高位推計では、2060年に1,087万人、出生低位推計では、2030年に1,000万人を割り、2060年には562万人と推計されています。

 

しかし、少子化が今後も進行するからとして、安易に学校統廃合を進めていいのでしょうか。それでは、ますます地域を疲弊させ、子どもの数は減り、悪循環を加速させることが懸念されます。

 

少子化の問題が最初に指摘されたのは、1992年に経済企画庁が出した「国民経済白書−少子社会の到来、その影響と対応−」とされています。

 

政府も少子化対策を一応講じてはきましたが、功を奏していません。当然でしょう。構造改革と称して、大企業による「正社員の非正規社員への置き換え」「賃金切り下げ」を政治が応援してきたのですから。

 

若者を使い捨てにしてにする社会で少子化対策が成功するはずがありません。子育て世代とされる年齢層の生活は安定せず、結婚して子どもを育てることが難しい状況になっています。

 

しかも日本の教育予算(公財政支出)は、OECD加盟国の中でも最低です。その分、教育費の家計負担が重くなっています。

 

少子化対策が功を奏していないのは、歴代政府の失政ではないでしょうか。

 

そういった根本的な問題を解決せず、子どもの数が減るから学校を統廃合して、学校経費を合理化、教育予算を削減するなど本末転倒です。

 

政府は「Uターン通達」の意味をしっかり考えるべき

政府は、1973年に「Uターン通達」を出した背景をしっかり考えて、その教訓を活かすべきです。

 

次のグラフは、公立小学校の児童数の推移と、旧文部省が学校統合に関して通達を出した時期を表したものです。

公立小学校児童数の推移

(文部科学省「学校基本統計」より作成)

 

1956年通達が出された当時は、子どもの数が増加し、戦後最初の児童数がピークを迎えようとしていた時期でした(児童数のピークは1958年)

 

小規模学校が多く、教員の配置や学校の施設整備にお金がかかりすぎることから、義務教育水準の向上と学校経費の合理化を目的に学校統合が進められました。

 

1973年通達(「Uターン通達」)が出されたのは、無理な学校統廃合を反省し、学校統合政策の方針転換を図るためでした。

 

「Uターン通達」を出して以降の文部省(当時)の指導は、地域の中における学校の意義や地域の実情を十分考慮するよう求めるものに変わりました。その意味を政府自身がしっかり教訓とすべきでしょう。

 

参考までに国会での政府答弁をいくつかご紹介します。

 

  • 学校というのは、それぞれの地域のいろいろな伝統あるいは住民の考え方等も反映をしてでき上がっているもので、必ずしも標準でなければならないというわけではない。

    (1992年3月11日 衆院・予算委員会第三分科会 文部省教育助成局長)

  •  

  • 父兄を含んだ地域の住民が、この地域で小学校なら小学校をどういうものであってほしいかということにちゃんとコンセンサスが取れることが一番の基礎になるんじゃないかと考えている。

    (2007年11月15日 衆院・文教科学委員会 渡海紀三朗・文部科学大臣)

 

1950年代、60年代に無理な統廃合を行ってきた結果、様々な問題が生じたからこそ、方針転換したのではないのでしょうか。地域の中の学校の役割も含めて、住民合意の尊重が言われてきたはずです。これ以上の無理な学校統廃合は、地域の崩壊にもつながりかねません。