コールマン報告

コールマン報告とは/「小さな学校」ほど教育効果が高い

MENU

小さな学校ほど教育効果が高いことを実証したコールマン報告

(2013年3月9日)

「コールマン報告」(「教育機会の均等性」)は、学校規模と教育効果の関係について、1960年代にアメリカ連邦教育局が実施した教育実態調査に基づき、アメリカの社会学者ジェームズ・コールマンらが1966年にまとめたものです。

 

小さな学校ほど、子どもの学校への帰属意識や愛着が強くなり、学習態度も能動的になることが実証され、小さな学校の利点を評価するものとなっています。

 

コールマン報告の大事なポイント

コールマンらの結論のポイントは次の点です。

 

学習効果を決定づける主要な要因は、教育課程・教材・教師の力量といったものには、ほとんど関係なく、むしろ「学校に対する関心、自己概念、および教育環境に自分がどの程度影響を与えられるのかという意味の環境に対する支配感という生徒の態度」だということです。

 

また、「学業成績とより強い関係があると思われる要因は、各生徒が自分の運命を自分で決められると、どの程度思っているかということ」だという点です。

 

つまり、「教育環境に対する支配感」「自分の運命に対する支配感」こそが、学習態度を能動的にするうえで決定的に大切だというのです。

 

これは、まさに人間としての本質的な部分です。人間は、自然や社会に働きかけ変革する能力を持った唯一の生き物です。自然を支配し社会を変革する能力が、人間の本質です。

 

自然を支配するというのは、自然の法則性を見出し、合目的的に自然に働きかけ変化させることです。もし人間の行う自然への作用が自然界の法則性に逆らっていれば、当然、自然から報復を受けることになります。近年の温暖化や異常気象がその例でしょう。

 

人間以外の生き物――植物はもちろん動物たちでさえ――自然の一部として生存しているにすぎません。たとえ動物たちの存在が自然環境を変化させることがあったとしても、それは意識的に変化させているのでなく、単に周辺の自然環境を利用することで変化しているのすぎません。その変化は自然の変化の一部でしかないのです。

 

ところが、人間は違います。人間は、人間的な環境で育てられれば、人間としての本質的な能力を身につけることができます。それは、自然や社会の法則性を認識し、それを本来あるべき姿に変革する能力です。こうした人間としての本質的な能力を身につけさせることが、教育の最も普遍的で本質的な営みです。

 

こうした能力は、主体的に生きる力であり、子どもたちの成長段階に応じた適切な集団規模の中でこそ身につくことが分かっています。その集団規模は比較的小さなもので、親密で安心でき、長期間継続し、安定した人間関係であることが不可欠です。

 

それは、小さな学校が、その規模の利点を活かして大切に育んできたものにほかなりません。

 

一般的に、大きな学校・大きな集団の方が、社会性が育つと思われがちですが、子どもたちは、許容範囲を超えた大きすぎる集団の中では、主体的に関わることができず、逆に無関心を生み出してしまうのです。

 

このことを実証したのがコールマン報告です。

 

「教育環境に対する支配感」とは?

「教育環境に対する支配感」とは、どういうものなのでしょうか。大きな学校と小さな学校を比較して、それがどのようなもので、どのようにして培われるのか考えてみましょう。

 

大きな学校は人数が多いので主体性が育ちにくい

大きな学校というのは、外見的には優れて見えるかもしれません。校舎は大きくて立派です。教室もたくさんあります。設備も整っています。教師陣も集められます。子どもの数も多く活気があるように思えます。

 

しかし、そういったものは、教育効果を高めるのに、ほとんど関係ないというのが、コールマンらの導き出した結論です。

 

子どもたちは大勢の中の1人にすぎず、多くは受身の姿勢になりがちです。みんなが自ら責任をもって積極的に貢献しようということにはなりません。授業は、「教えられる」にすぎません。学校行事などもあまり関心を示さず、決まったことに参加するといった程度です。人数が多いので、どうしてもそういう子どもたちをつくり出してしまうのです。

 

小さな学校は授業や学校を自分たちでつくり上げる

一方、小さな学校というのは、子どもの人数が少ないので、授業や学校の行事などに、みんなが積極的に責任を持って貢献するように刺激されます。

 

例えば、授業風景を想像してみてください。基本的に教える内容は学習指導要領で定められていますが、授業というものは、本来どれ1つとして同じものはありません。しかし、大きな学校は、授業が画一化されやすい傾向があります。

 

それに対して小さな学校では、子どもたち一人ひとりの学習の到達状況を踏まえることができ、その場で子どもたちから出された発言に基づき、授業はつくり上げられていきます。子どもたちはいろいろな考え方をします。想像もつかないような発言が飛び出すこともあります。そして、みんなが発言する機会を与えられます。つまり、子どもたちみんなが授業に主体的に参加して、子どもたち自身がそのクラス固有の授業をつくり上げていくのです。

 

学校行事でも同じです。大きな学校の場合は、管理というものに重きを置かれますが、小さな学校の場合には、子どもたちが主体的に考え、自分たちでつくり上げていくことが可能です。人数が少ないので、全員参加が可能です。自分たちの学校をみんなで協力して自分たちの力でつくり上げることを学びます。

 

こうして、子どもたちみんなが、「教育環境に対する支配感」というものを培うことができるのです。さらにそういった体験を通じて、「自分の運命に対する支配感」を育むことができるのです。

 

ですから、教育効果を高める決定的な要因は、学校の規模であって、それは小さければ小さいほど良いということなのです。