小中学校統廃合推進へ国の指針見直し

少子化を理由に小中学校統廃合推進へ国が「指針」見直し年内に通知の方向

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文科省が新たな手引を公表

(2015年1月29日更新)

2015年1月27日、文部科学省が学校統廃合に関する新たな「手引」を各教育委員会に通知しました。

 

「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引」のポイントと問題点

 

小中学校の統廃合を加速させる新「指針」を年内に通知

(2014年7月29日)

国が小中学校の統廃合に関する指針を見直し、学校統廃合を積極的に推進する方針を固めたことが、今朝の新聞で報じられていました。

 

少子化によって、教育の質を確保する上で必要な子どもの数や学級数を維持できない学校が増えていることに対応し、バス通学を想定して新たな基準を設けるとしています。

 

文部科学省は、教育の質を高めるためとして、統廃合を加速させる新たな指針をまとめ、年内にも全国に通知する方針のようです。

 

政府のねらう「新たな指針」の内容

政府のねらう新たな指針の内容について、詳細はまだ明らかでありませんが、

  • 学校統廃合により通学距離が遠くなることから、バス通学を想定した基準を設ける
  • 学校を統廃合する地方自治体に国が財政支援する

ことなどが検討されているようです。

 

現在の指針では、徒歩通学を前提に、通学距離を、小学校は4キロ、中学校は6キロを上限としています。新「指針」では、学校統合によってスクールバスなど交通機関を利用せざるを得なくなる児童生徒が多数生じることを想定し、、通学時間の上限を30分程度とする方向で調整されているもようです。

 

それにしても、車で30分もかかって通学する距離が、果たして適正なのでしょうか。子どもたちが歩いて通えないような小学校でいいのでしょうか。

 

1973年「Uターン通達」無視した報道

報道では、「約60年ぶりの見直し」「現行の指針を1956年に通知して以来の改定」とされています。

 

しかし、これは厳密に言えば事実と違います。「規準」の見直しという点では、たしかに60年ぶりですが、「指針」ということになれば違うのです。

 

1956年に小中学校の統合を推奨する通知が出され、その中で、通学距離の上限について基準が定められました。このときの通知は、学校統合を推進するためのものでした。

 

しかし、全国各地で無理な学校統廃合が強行され、様々な弊害が出てきたことから、1973年に方針転換する新たな通知(「Uターン通達」)が出されました。現行の学校統廃合に関する国の指針は、この1973年通知です。

 

学校統廃合を見直し方針転換した1973年の通知では、

  1. 学校規模を重視する無理な学校統合をしてはいけない
  2. 小規模校には教育上の利点があるので、小規模校として残して充実することが好ましい

とされました。仮に統合するにしても、

  1. 通学距離・時間が子どもたちの心身、安全、学校の教育活動に与える影響を十分検討して無理のないように配慮すること
  2. 学校の持つ地域的意義を考慮すること
  3. 十分に地域住民の合意を得ること

という注意点が示されました。

 

1973年の「Uターン通達」について詳しくはこちら

 

全国各地の住民運動の力で勝ち取った、この画期的な1973年の通知をなぜ無視するのでしょうか?

 

政府の発表をそのまま無批判に報道する、安倍政権のもとでのマスコミの報道姿勢には恐ろしさを感じます。

 

1973年通達での反省はどこへ?

1973年の通達は、学校統廃合を強引に進めたことを反省し、学校統合政策の方向転換を図るためのものでした。

 

この通達以降、住民合意のない強引な学校統合を禁止し、小規模校を残して充実させる方向へ転換しました。「適正規模」「標準規模」にこだわる必要はない、地域の中における学校の意義や地域の実情を十分考慮するようにというのが、歴代政権のスタンスでした。

 

過去の1956年通達の時代に、機械的・一律的に学級数や通学距離が標準となればよいという考え方をしていたことを反省し、学校の持つ地域的意義、それぞれの地域の事情やコミュニティーを尊重するというのが、同じ自民党政権であっても歴代政権のスタンスでした。

 

2001年3月27日、参院・文教科学委員会で河村建夫・文部科学副大臣は次のように発言しています。

 

文部科学省としては、…小規模校としての教育上の利点も考えられるということで総合的に判断をした場合、なお小規模校として残すことの方が地域にとっても好ましい、こういうことに配慮する必要があろうというふうにしておるわけでございまして、かつて昭和30代以降の通達等々では、機械的に距離であるとか今の学級数とかでもある程度基準にかなえばということであった、それこそ一律的な考え方をしておったのでありますが、地域に非常に事情がございますし、また学校区によってコミュニティーができているという場合もございます。

 

そういうことも十分配慮する必要があろうということで、学校統合を計画する場合には、学校の持つ地域的な意義等を考えながら各教育委員会に指導をいたしておるところでございます。

 

このような観点で、引き続いて学校統合、学校規模の適正化については指導をしてまいりたい、このように考えております。

 

1973年通達後の歴代政府・文部科学省の国会での答弁について詳しくはこちら

 

安倍政権というのは、歴代政権が営々と築き上げてきた、国民にとって価値ある大切なものを反故にし、歴史を逆行させることが、よほど好きなようです。

 

少し横道にそれますが、つい最近も安倍政権のそういった姿を、集団的自衛権行使容認の閣議決定で目の当たりにしました。憲法9条のもとでは集団的自衛権行使は認められないというのが歴代政府の立場でしたが、安倍政権は閣議決定でそれを覆してしまいました。

 

第1次安倍内閣のときも第2次安倍内閣のときも、集団的自衛権の行使が必要とされる背景として、決まって安全保障環境の悪化があげられました。

 

安倍首相が登場すると安全保障環境が悪化するのですね。これは言葉の上だけでなく、事実そういう面もあります。自分で悪化させているのです。同盟国として崇拝する米国からは、韓国や中国などアジアの隣国と絶えずトラブルを起こす「危なっかしい国」として、いまの日本は見られています。

 

実は、教育でも同じなんです。安倍内閣が登場すると、なぜか小中学校を統廃合しないと、教育の質を維持できなくなるのですね。安倍首相が登場すると、少子化によって教育環境が悪化し、教育の質を維持できなくなってしまうのです。

 

近年、学校統廃合が浮上したのは第1次安倍内閣のときです。安倍首相が退いた後は、国レベルで議論は下火になり、第2次安倍内閣になって、再び小中学校の統廃合に国が積極的に関与する議論が浮上しました。

 

自民党内では、すでに法案も準備されています。小中一貫校導入による小中学校統廃合もねらっています。

 

教育委員会制度を改悪し、国や自治体首長が介入できる仕組みも作り上げました。地方自治体の教育政策の方針となる「大綱」を首長が決定することになります。「大綱」には、「学校統廃合を進める」「愛国心教育を推進する」などを盛り込むことができます。その具体化を教育委員会に実行させることができるのです。

 

安倍内閣の暴走ぶりは、本当に目に余ります。

 

世界の流れに逆行する学校統廃合

海外に目を向けると、「小さな学校」「小さなクラス」が世界の流れです。その流れに逆行し、統廃合によって学校規模を大きくしようというのが、安倍政権の学校統廃合の動きです。

 

いま以上の学校統廃合は、子どもたちの教育にとってマイナスであるだけでなく、地域も崩壊させてしまいます。

 

もちろん、指針には強制力はなく、統廃合するかどうかは市町村の判断です。しかし国は、財政措置を含め「アメとムチ」で地方自治体に迫りますから、よほど強い信念をもった首長のいる自治体でないと、国の意向に反して学校統廃合を拒否するのは難しいのではないでしょうか。

 

今後、地域での慎重な判断が重要になってきます。